成功の鍵!AWS運用代行サービスの選び方【比較選定】

「本業に専念できない」「リソースが足りない」「監視や復旧、再発防止策実施などの運用体制が脆弱」といった様々な課題を抱え、Amazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス。以下、AWS)をはじめとするパブリッククラウドの運用代行サービスを比較検討している方も多いのではないでしょうか。

要望と特徴をマッチさせる
要望と特徴をマッチさせる

サービスの選定基準は、企業によって様々ですが、「価格(コスト)」「サポート」「企業規模」「知名度」「知り合いの紹介」などが挙げられます。

しかし、最も重要なのは、自社の要望に合致した特徴を持つAWS運用代行サービスを選ぶことです。

以降では、自社に最適なAWS運用代行サービスを選定するために必要な、3つのポイントについて解説します。

・ ポイント1.利用する目的を明確にする
・ ポイント2.特徴やタイプを知る
・ ポイント3.自社のニーズに合ったサービスを選ぶ

自社の目的と相性が良いタイプからパートナーを選ぶことができれば、失敗の確率を大幅に減らすことができます。この記事が、クラウドの運用代行サービス選びの参考になれば幸いです。

ポイント1.利用する目的を明確にする

自社にあったサービスを選ぶためには、サーバー監視やパフォーマンスチューニング、セキュリティ対策、設定変更の実施有無などの必要な要件や料金、提供エリア、サポート体制などの比較が必要になります。しかし、それ以上に重要なのは、運用代行サービスを利用する目的を明確にすることです。

目的を明確にする
目的を明確にする

お客様がクラウドの運用代行サービスを探す目的は、大別すると3パターンに分かれています。

・目的1.インフラすべてを任せたい
・目的2.自社で出来ない部分を代行してほしい
・目的3.クラウドに対する知見を高めていきたい

まずは、この3パターンについて解説していきます。

目的1.インフラすべてを任せたい

自社サービスを抱えつつも、社内にインフラ担当者がいない企業に多いパターンです。

インフラが安定稼働していれば、本業に専念することはできますが、運用にはトラブルがつきものです。日常的には安定していても、ビジネスの繁忙期に限って問題が発生することは多々あります。トラブルに適切な対処ができないと、解決にリソースを大きくとられてしまい、本業に専念することができなくなってしまいます。

社内でトラブルに対応する体制を作ろうとしても、専門の知識や技術を持ったエンジニアを複数人確保する必要があり、なかなか大変です。

そこで、インフラを丸ごと任せるために、AWS運用代行サービスを探すことになります。

目的2.自社で出来ない部分を代行してほしい

運用の仕組みが確立しているものの、人手が足りていない企業に多いパターンです。

システムの運用には、休日や夜間に関わらず対応が必要です。24時間365日体制で必要なエンジニアを自社で抱えるのは大きなコストがかかります。
そこで、定型作業や特定スキルのリソース確保のためにAWSの運用代行サービスを利用し、アラート検知時の復旧対応や定期作業を外部へアウトソースすることでコストパフォーマンスを高めることができます。

目的3.クラウドに対する知見を高めていきたい

エンジニアが多数在籍し、AWSを徹底的に活用したい企業に多いパターンです。

クラウドのメリットを最大限に生かすためには、様々なサービスを適材適所で使いこなして最適化する必要があります。AWSのサービスアップデートのスピードはとても速く情報が溢れかえっているため、「片手間で最新の情報にアクセスし続けていくことが難しい」という現実があります。

そんな時に、最新情報のキャッチアップやベストプラクティスを補強する手段として、クラウドの運用代行サービスを利用します。

ポイント2. 特徴やタイプを知る

特徴やタイプを知る
特徴やタイプを知る

AWS運用代行サービスを提供している会社には、大きくわけて3つのパターンがあります。

・タイプ1. フルマネージド型
・タイプ2. 定型作業型
・タイプ3. AWS特化型

ぱっと見では似たようなサービスに見えますが、企業の成り立ちや思想によって、得意不得意が大きく変わってきます。ここの違いを知り、最適なサービスを選ぶことが重要です。

タイプ1. フルマネージド型

フルマネージド型は、作業ではなくインフラ全体の安定稼働に責任を持ちます。

古くから運用事業を行っている企業が多く、能動的な対応が特徴です。

取引先は中小企業がメインで、社内にインフラ担当者がいない企業に対して、丸ごと対応を請け負う形でサービス提供しています。クラウド以前からインフラ運用保守のサービスを提供しているため、EC2インスタンスを使うようなスタンダードな構成に強く、サーバレス開発などクラウドの先進的な使い方はそれほど強味になっていない企業が多いのが特徴です。

価格については、定型作業型と比較すると少し高く、1台2~3万円くらいの価格帯になっていきます。

タイプ2. 定型作業型

定型作業型は、手順書作業を基本とした24時間365日体制の運用サービス(MSPともいいます※)です。
※MSP:マネージド・サービス・プロバイダ

フルマネージド型と同様に、古くから運用事業を行っている企業が多く、事前に決めた運用設計にもとづき、定型作業を確実に対応するのが特徴です。

取引先に大企業が多く、定型作業はきっちりと対応する反面、能動的な対応やイレギュラーな対応は苦手であることが多い傾向があります。また、フルマネージド型と同様に、時代の流れに合わせてクラウドへシフトしてきているので、先進的な使い方には「AWS特化型」ほど強みがない印象です。

価格については、1台1万円程度の低価格帯が多くなります。先述のフルマネージド型のベンダーが、一部のパーツのみ提供して定型作業のみサービス提供しているケースもあります。

タイプ3. AWS特化型

AWS特化型は、クラウドネイティブなクラウド活用の促進を実現してくれます。

AWSをはじめとするAWSは、インフラをコードで扱えることから、開発者との相性が良いことで知られています。不得手なインフラ知識はクラウドサービスが補ってくれることもあり、「AWS特化型」サービスの運営企業は、もともとは開発会社であることが多いです。

自分たちが率先してAWSを活用し、知識習得を行っています。サービス開始当初からAWSの機能をフル活用してきたこともあり、クラウド利用料の割引をした請求代行も積極的に行っているところが多く見受けられます。

自動化の促進やサーバレスなアプリケーション開発など、オンプレミスでは実現できなかったようなモダンな実装を行うことが得意です。また、自動化ツールを提供し、自ら行う業務の効率化など等にも長けています。

ポイント3.自社のニーズに合ったサービスを選ぶ

自社のニーズに合ったサービスを選ぶ
自社のニーズに合ったサービスを選ぶ

目的とタイプの相性の良い組み合わせは表の通りです。

表.自社のニーズに合ったサービスを選ぶための早見表

タイプ タイプ1.フルマネージド型 タイプ2.定型作業型 タイプ3.クラウド特化型
目的1.インフラすべてを
任せたい
★★★
目的2.自社で出来ない
部分を代行してほしい
★★ ★★★ ★★
目的3.クラウドの知見を
高めていきたい
★★★

目的1. インフラすべてを任せたい場合

「インフラすべてを任せたい」場合は、「フルマネージド型」がおすすめです。インフラについて丸ごと任せて本業に専念することができます。

それ以外のタイプを選んでしまうと、運用中に必要な項目の抜け漏れが発覚し、その対応に翻弄されることになります。対象範囲がAWSに加えて、サーバー内のミドルウェアも対応しているかを確認しておきましょう。再発防止についての考え方について確認しておくのも良いと思います。

ただし、既にある環境の運用を任せる場合は、出来ること、出来ないことがどうしても出てきます。事前にしっかりと内容を確認しておき、運用後に問題が出ないようにしておきましょう。

場合によっては、インフラをリプレイスしてしまい、完全にお任せ状態にすることを選択肢としても良いかもしれません。

目的2. 自社でできない部分を代行してほしい場合

「自社でできない部分を代行してほしい」場合は、「定型作業型」がおすすめです。自社で手の届かない部分をコストパフォーマンスよく補うことができます。

それ以外のタイプでも、要望とマッチしているのであれば問題ありません。サービス停止を伴う障害が発生した場合の復旧方法や、再発防止策についての考え方、提案内容など確認しておきましょう。

目的3. AWSの知見を高めていきたい場合

「AWSの知見を高めていきたい」場合は、「AWS特化型」サービスがおすすめです。豊富な知見を武器に、よりクラウドネイティブな使い方を促進することが期待できます。

それ以外のタイプを選んでしまうと、自社のやりたいことにパートナーの実力が追いついておらず、意思疎通に苦労してしまう可能性もあります。企業全体の技術力をよく見定めましょう。

まとめ

AWSの運用代行サービスを利用して運用負荷を軽減するためには、利用目的に合ったタイプのサービスを選ぶことが重要です。一度「サービスを使う目的」を見直し、自社にあったAWS運用代行サービスを探してみましょう。

最後に、AWSの運用代行サービスの選び方を比較するための表を記載しておきます。サービス選びの際にご活用ください。

表.AWSの運用代行サービスの特徴

比較項目 タイプ1.フルマネージド型 タイプ2.定型作業型 タイプ3.クラウド特化型
クラウドに対する
先進的な知見
クラウドに対する知見
サーバーやミドルウェアに
対する知見
社内に必要となる
エンジニアの数
不要 少ない 多い
価格 2万~ 1万~ 1万~
対応の傾向 能動的 受動的 受動的
主な取引先 中小企業 大手 全般
元々の主事業 MSP MSP システム開発
対応範囲 AWS
サーバー内
AWS
サーバー内
AWS