Difyで作る企業調査ボット:営業の競争力を高める実践事例

営業活動において、顧客企業の綿密な調査は成功の鍵を握る重要なプロセスです。しかし、多くの営業担当者は以下のような課題に直面しています:

  • 限られた準備時間:次々と入ってくる案件に対応するため、1社あたりの調査時間が不足
  • 情報の分散:企業サイト、ニュース、業界情報など、必要な情報が様々なソースに散在
  • 調査の標準化:担当者による調査品質のばらつき
  • 情報の陳腐化:過去の情報に基づいた提案が顧客のニーズとずれる可能性

株式会社ディーネットでは、こうした課題を解決するため、Difyプラットフォームを活用した「企業調査ボット」を開発・導入しました。この記事では、その仕組みと効果、そして実装のポイントをご紹介します。

Difyワークフローで実現する高度な企業分析

システム構成と情報収集フロー

企業調査ボットは、Difyのワークフロー機能を活用して構築されています。システムの大まかな処理フローは以下の通りです:

1. 入力情報の取得

  • 会社名:調査対象企業の正式名称
  • 企業URL:公式Webサイトのアドレス(同名企業の混同防止)

2. 並列情報収集プロセス

複数のソースから同時に情報を収集することで、短時間で幅広い情報を取得します:

① 企業公式サイトの分析

  • トップページのキーメッセージや主要コンテンツの抽出
  • 「企業情報」「会社概要」関連ページの自動検索と情報収集
  • 「サービス」「製品」関連ページからの提供価値の分析

② 外部情報の取得

  • Perplexity Searchを活用した最新ニュース・プレスリリースの収集
  • 業界固有の情報(本事例ではAWS関連情報)の特定
  • 競合他社との差別化ポイントの分析

3. 情報の統合・レポート生成

収集した情報を、営業担当が最も効率的に活用できる形式に整理。

  • 企業概要サマリー(業種、規模、沿革など)
  • 主力サービス・製品の特徴と強み
  • 最新の企業動向(新サービス、組織変更、業績など)
  • 想定される課題やニーズ
  • 提案のための参考ポイント

業務フローへの組み込み:Slackインテグレーション

企業調査ボットの真価は、日常の業務フローにシームレスに統合されている点にあります。ディーネット社では、以下のフローで活用されています。

  1. 新規問い合わせ顧客情報がSlackチャンネルに自動通知
  2. 営業担当者がその通知に対して特定のスタンプ(例:調査)をクリック
  3. Slackボットが起動し、会社名とURLの入力を要求
  4. 入力情報をもとに、Slackボット→スプレッドシート→Dify APIの連携で調査を実行
  5. 調査結果がスレッド内に自動投稿され、すぐに営業活動の検討が開始できる

この仕組みにより、調査開始のハードルが大幅に下がり、新規問い合わせから提案までのリードタイムを劇的に短縮することに成功しています。

技術的ポイント:Dify活用のコツ

企業調査ボットを自社で構築する際の技術的なポイントをいくつかご紹介します:

1. 情報収集の精度を高めるパラメータ設定

Web Scraper機能を活用する際は、単純にURLを指定するだけでなく、以下のポイントに注意しました:

  • サイトマップの事前分析:多くの企業サイトは、「企業情報」「サービス」などのセクションが特定のパターンを持っています。これを事前に分析し、最適なページを自動的に特定する仕組みを実装。
  • 情報の優先度設定:膨大な情報の中から、営業提案に直結する内容を優先的に抽出するよう、LLMへの指示を最適化。

2. APIインターフェースの活用

Difyの強みの一つは、開発したワークフローをAPIとして公開できる点です。これにより:

  • 既存システムとの連携:Slack、社内CRM、メールシステムなど、既存のツールと連携可能
  • 自動化の促進:定期的な情報更新や、特定イベントをトリガーとした調査実行が可能に
  • カスタムインターフェース:社内の利用シナリオに最適化したUIを構築可能

3. レポート形式の最適化

情報を単に羅列するのではなく、営業活動に直結する形式でレポートを構成することが重要です:

  • SWOT分析要素の組み込み:強み・弱み・機会・脅威の観点で情報を整理
  • 提案ポイントの自動提示:収集した情報から、有望な提案ポイントを自動抽出
  • 競合差別化の視点:競合他社と比較した際の独自性・優位性を強調

まとめ:Difyで実現する営業DX

Difyによる企業調査ボットの事例から、以下のポイントが見えてきます。

  1. ノーコード開発の威力:プログラミングスキルがなくても高度なAIシステムが構築可能
  2. APIによる柔軟な統合:既存の業務フローにシームレスに組み込める連携性
  3. 並列処理による効率化:複数のソースから同時に情報収集することによる時間短縮
  4. AIによる情報の構造化:膨大な情報から価値ある洞察を抽出する能力

企業調査は営業活動の基盤であり、その質と効率は直接的に売上に影響します。

営業DXを推進する企業様には、ぜひDifyプラットフォームを活用した企業調査ボットの導入をご検討いただければと思います。導入の敷居は低く、効果は非常に大きいソリューションです。

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