クラウドサービスのなかでも高いシェアを誇るAWS(Amazon Web Services)。必要なときに必要な分だけ利用できる柔軟さが魅力ですが、「AWSの料金はどう決まるの?」「思わぬ高額請求にならないか不安」と感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AWS料金の基本的な仕組みや料金が発生するポイント、そして見積もりや削減に役立つツールや方法まで、幅広く解説します。初めてAWSを検討する方や、すでに導入しているがコスト最適化に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. AWS料金の基本:従量課金制とは?
AWSは基本的に「従量課金制」を採用しています。
- 使った分だけ料金を支払う
- 固定費ではなく、月によって請求額が変動
- 長期契約や解約違約金などは不要
例えばAWSの代表的なサービスであるAmazon EC2(仮想サーバー)は、インスタンスを起動している時間に応じて1秒単位で料金が加算される仕組みです。「水道や電気」と同様に、使わないときは料金が発生しないので、夜間や休日にEC2を停止するなど工夫すればコストを抑えられます。
AWS料金の決済方法
- クレジットカード:原則としてUSD(米ドル)建てでの請求
- 請求書払い:月額2,000ドル以上の利用など一定条件を満たす企業向けに対応
- APNパートナーの請求代行サービスを使うことで、日本円の請求書払いに切り替えることも可能
2. AWSの料金体系:主な費用の内訳
AWSでは、多種多様なサービスが提供されていますが、料金体系を大きく分けると下記の3つに分類される場合が多いです。
- コンピューティング(サーバー)
- ストレージ
- データ転送(ネットワーク)
2-1. コンピューティング(Amazon EC2など)
- Amazon EC2:仮想サーバーを作成できる代表的なサービス
- AWS Lambda:イベント駆動型で実行単位ごとに課金されるサーバーレスサービス
- Amazon ECS:Dockerを使ったフルマネージド型のコンテナサービス
EC2の場合は「インスタンスタイプ」と呼ばれるCPUやメモリのスペック、さらにリージョン(東京・バージニアなど)によって1時間あたり、または1秒あたりの料金が異なります。
ポイント
- 不要なインスタンスは停止すれば料金は発生しない
- 1時間あたり数十円〜数百円程度が目安(高スペックなほど高額)
- Lambdaは実行時間単位の課金
2-2. ストレージ(Amazon S3など)
- Amazon S3:オブジェクトストレージ。1GBあたり数円程度
- Amazon EBS:EC2インスタンスに紐づくブロックストレージ
- Amazon EFS:ファイルストレージ
S3やEFSは保存量によって課金され、1GBあたり月数円と非常に低コスト。静的ウェブサイトのホスティングにも活用されます。
一方、EBSはプロビジョンした容量によって料金が決まるため、容量を増やすほど費用も上がる点に注意しましょう。
また、ストレージの料金は、ストレージクラスやスループットなどにもかかる場合があります。
2-3. データ転送(ネットワーク利用料金)
AWSでは、リージョン外にトラフィックを転送するときや、インターネットへの送信時にデータ転送量の料金が発生します。
- 外部→AWSへの通信:基本的に無料(例:ファイルアップロード等)
- AWS→外部への通信:一定の無料枠を超えると従量課金(例:コンテンツ配信等)
- AWS内の同リージョン間の通信:基本的に無料(ただし一部例外あり)
たとえば、EC2インスタンスでウェブサイトを運用すると、ユーザーへのデータ配信量が多いほどネットワークコストも高くなります。
3. AWS料金はどう決まる?3つの要素
AWSの料金を左右する主な要素は以下の3つです。
- 利用するサービス:EC2、S3、RDS、Lambdaなど
- リソースのスペックや規模:インスタンスタイプやストレージ容量など
- 稼働時間・データ転送量:実際に使った分が課金対象
組み合わせ次第でコストが大きく異なるため、最初に目的や要件を整理し、必要なサービス・必要なスペックを選定することが重要です。
4. AWS料金の見積もり方法:おすすめツールと手順
「どのくらいの費用になるか試算したい」という場合は、公式を含む便利なツールがあります。
4-1. AWS Pricing Calculator
AWS Pricing Calculatorは、AWS公式の料金計算ツールです。
- 利用したいサービス(例:Amazon EC2、Amazon RDSなど)を選択
- リージョン・インスタンスタイプ・使用時間などを入力
- 見積もり結果を保存や共有リンクの生成が可能
公式ツールなので精度が高く、構成が複雑な場合でもある程度まとめてシミュレーションできます。
4-2. ざっくりAWS
ざっくりAWSは有志が提供している非公式の料金ざっくり計算サイトです。
- 入力項目が絞られており、シンプルで使いやすい
- 大まかな料金感を素早く把握できる
ただし正確な料金を知りたい場合はAWS公式ツールを利用しましょう。
5. AWS料金を抑える5つの方法
AWSは「使った分だけ支払う」ため、使い方次第で大きくコストを削減できます。代表的な方法を5つ紹介します。
5-1. 不要なリソースの停止・削除
- 使っていないEC2インスタンスや開発環境はこまめに停止
- ストレージも不要なデータは削除
不要なリソースが残っているだけで課金されるケースも多いので、定期的に利用状況をチェックしましょう。
5-2. 請求アラート機能で使いすぎを防ぐ
- AWS Budgetsで請求アラートを設定
- 一定の予算を超えそうなときにメールやSNSなどで通知
利用額が想定以上に膨らむ前に気づけるので、不測の高額請求を防げます。
5-3. リザーブドインスタンスやSavings Plansの活用
- リザーブドインスタンス(RI):1年/3年単位の予約で大幅割引
- Savings Plans:RIより柔軟に割引を適用可能
長期的にAWSを利用する場合、従量課金(オンデマンド)よりも最大で数十%〜70%近く割引になるケースがあります。
5-4. 海外リージョンを検討する
- 東京リージョンより米国東部(バージニア北部など)のほうが料金が安い場合も
- 遅延(レイテンシ)や法規制・社内規則上の要件に注意
負荷テストやバックアップなどレイテンシが重要でない用途なら、低コストな海外リージョンへの移行も一つの手です。
5-5. 請求代行サービスや最適化支援の活用
- AWSパートナー企業の請求代行でAWS利用料が割引になるケースも
- 運用監視や技術サポート、コスト最適化アドバイスがセットになったプランもある
コスト最適化のノウハウやリソース監視を専門家に任せられるため、社内リソース不足を補えるメリットがあります。
6. AWS料金の確認方法:請求情報とコスト管理
AWSは紙の請求書が届くわけではなく、管理画面(コンソール)から常時確認できます。(APNパートナーの請求代行サービスを利用していると、利用できないケースがあります)
- AWSマネジメントコンソールにログイン
- 右上の「アカウント名」をクリック
- 「請求情報とコスト管理」を選択
- Cost Explorer:過去の利用料金をグラフ化
- Budgets:予算の上限やアラートを設定
リアルタイムで利用料をモニタリングし、予想外の高額利用を回避しましょう。
7. 料金目安が知りたい!AWS導入事例
「具体的にどのくらいの料金になるのか、ケース別の目安を知りたい」という声も多いです。構成や利用状況で異なるため、あくまで一例としてご覧ください。
- 動的Webサイト
- 構成例:EC2(t3.micro,ディスク100GB)×1台、RDS(db.t3.micro,ディスク100GB)、CloudFront(転送量100GB)など
- 月額目安:約8,000〜20,000円程度(アクセス量により変動)
- 参考カリキュレーター
- 仮想デスクトップ(VDI)環境
- 構成例:Amazon WorkSpaces、AWS VPN、AD Connector
- 月額目安:1ユーザーあたり数千円〜(利用時間やスペックによる)
- Windowsファイルサーバー構築
- 構成例:EC2(Windows OS)、EBS+S3でバックアップ
- 月額目安:16,000〜30,000円程度(スペックやデータ量により変動)
- 社内業務アプリ環境(中規模)
- 構成例:EC2(アプリサーバー×2台)、RDS、VPC構成、AWS Backupなど
- 月額目安:30,000〜100,000円程度(同時アクセス数や性能要件による)
これらはAWS公式のクラウド構成例や、各ベンダーの導入事例を基にしたあくまで概算です。実際にはサーバー台数やインスタンスタイプ、ストレージ容量、データ転送量によって大きく変動します。
8. まとめ
AWSは「従量課金制」かつ多様なサービスがあるため、最初は料金が複雑に感じられるかもしれません。しかし以下のポイントを押さえれば、コストを最適化しながら安心して利用できます。
- 料金の基本は「使った分だけ支払う」
- EC2などのサーバー代、S3などのストレージ代、データ転送量が主な内訳
- 料金計算ツール(AWS Pricing Calculatorなど)で事前に概算を把握
- BudgetsやCost Explorerで請求を監視
- リザーブドインスタンスや削除の徹底などで無駄をカット
適切な構成と管理を行えば、AWSは高い柔軟性とスケーラビリティを維持しつつ、コストもコントロール可能です。AWSの料金を理解して、ぜひビジネスの成長につなげてみてください!
日本円の請求書払いを行いたい場合は、AWS請求代行サービスをご検討ください。