企業にとって売上データの分析は重要な業務ですが、データ処理に多くの時間を費やしていませんか?
本記事では、生成AIを活用して売上データを素早く分析できるツールをDifyで実装した事例をご紹介します。わずか半日程度の開発で、データ分析業務を効率化した取り組みをご覧ください。
課題と解決策
過去に、Amazon QuickSight+Athena+Amazon S3で売上データの分析基盤を構築したものの、いくつかの課題を抱えていました。Difyを利用することで、その課題の解決策を検証していきました。
課題:
- 分析作業が属人化していた
- データから洞察を得るまでのリードタイムが長かった
- 従来通りExcel等で分析している人もおり、データの分析に多くの時間を要していた
解決策:
- Difyを活用した生成AIベースの売上分析ツールを構築
- 自然言語での問いかけから、インサイトを取得
- データ分析作業の自動化と効率化を実現
システム構成
システム全体のアーキテクチャは次の通りです。データソースであるS3とAthenaの環境はすでに構築済みでした。そのため、今回は、ユーザーインタフェース部分と処理フロー部分を構築しています。
全体アーキテクチャ
- データソース: Amazon S3に売上データをCSV形式で保管
- ユーザーインターフェース: Difyのチャットインターフェース
- 処理フロー:
- ユーザーが自然言語で質問
- 生成AI(LLM)が質問内容からSQLを自動構築
- API Gateway経由でLambdaがAthenaにクエリを発行
- クエリ結果をもとにAIが分析を実施し回答

Difyアプリケーション構築
Difyではワークフローを活用して以下の処理を実装しています。
1. 質問の明確化
ユーザーからの曖昧な質問を明確化し、SQL構築に適した形に変換します。例えば「先月の売上は?」という質問を「2025年3月の全製品の売上合計を教えてください」のように具体化します。
2. SQL構築
明確化された質問からAthena用のSQLを自動生成します。ここでは以下のような技術的課題に対処しました。
- AthenaのPrestoベースのSQL構文への対応
- 日本語のエイリアス名のダブルクォーテーション処理
- 改行やコードスニペット情報の適切な処理
3. SQLクエリ発行
構築したSQLをAPI Gateway経由でLambda関数に渡し、Athenaでクエリを実行します。これによりS3上のデータに対して効率的な分析が可能になります。
4. 回答生成
クエリ結果と元の質問内容を照らし合わせ、ビジネス的な洞察を含む最適な回答を生成します。単なる数値の羅列ではなく、トレンドや異常値の指摘なども行います。

回答できる内容の例
このツールでは、以下のような質問に回答可能です。
- 「初期費用と月額料金の推移を教えて」
- 「2025年2月と3月の売上を比較して」
- 「株式会社○○のサービスごとの売り上げ推移を取得して」
- 「顧客セグメント別の売上構成比はどうなっている?」
- 「昨年同期比でどのサービスが最も成長している?」
導入効果
- 時間削減:
いままで、数時間かかってExcel等を駆使して分析していた作業が数分に短縮されました。 - アクセシビリティ向上:
過去にも売上データは分析用にS3へ保存し、Athenaでクエリできるようになっていましたが、SQLを書ける一部の担当者しか利用ができていませんでした。しかしながら、SQLを書けない担当者でもデータ分析が手軽に利用できるようになりました。 - 意思決定の迅速化:
少し気になったことを数秒で確認できるので、データに基づく判断をより早く行えるようになりました。 - 分析の質向上:
AIによる多角的な視点から分析をすることで、手動では気づかなかった分析結果を確認することができています。
まとめ
Difyを活用した売上分析ツールの構築は、半日程度という短期間で実現できました。生成AIの力を借りることで、データ分析の民主化と効率化を同時に達成できます。SQLの知識がなくても、自然言語で質問するだけでデータから洞察を得られるツールは、ビジネスの意思決定スピードを大幅に向上させます。
今後はさらに機能を拡充し、予測分析や異常検知などの高度な分析も可能にしていく予定です。Difyの柔軟性を活かし、ビジネスニーズに合わせた拡張を続けていきます。